2022年に、小売業が広告予算を最大限に活用する方法

2022年の広告予算を最大限に活用したいとお考えでしょうか? CLV(顧客生涯価値)を高め、適切なユーザーにターゲティングを行い、広告がボットに配信されないようにすることがなぜ必要なのか、弊社のJAPACコマーシャルディレクターのジョシュア・ウィルソンがご説明します。

世界の小売業のeコマースの売上高は、過去数年間で着実に増加しています。そして、パンデミックに直面したにもかかわらず、2022年には前年比で12.23%増加すると予測されています。

消費者に、オンライン購入の選択肢が数多くある今、ターゲット・オーディエンスに最も効率よくリーチするポイントには、以下の3点が挙げられます。

(1)顧客生涯価値(CLV)を最大限に高める

すべての顧客にはライフサイクルがあり、それは提供する製品やサービス、顧客のタイプによって、ブランドごとに異なります。CLVを最大限に高めることで、新規顧客の開拓やロイヤルカスタマーの育成に投資するマーケティング予算を、より適切に配分することができるのです。

顧客のライフサイクルには、主に3つのステージがあります。新規顧客の発掘(New)、見込み顧客のコンバージョン(Convert)、そして生涯価値の向上(Grow)です。新規顧客率を高めた英国のファッションブランド「ミス・セルフリッジ(Miss Selfridge)」の事例を見ていきましょう。

ミス・セルフリッジはディスプレイ広告による純増効果を把握したい、そして新規顧客率を40%超まで高めたいと考えていました。これを達成するために、私たちはメディア予算の5割を新規顧客へのリーチのために投資しました。そして新規顧客がいつ、どこで興味を示しているのかを、配信時のリアルタイムシグナルやキーワード検索のブランドリフトをもとに明らかにしました。また、セール情報や新製品など関連性のある広告も表示しました。

Miss Selfridge Crimtan Ad for NEW Stage

見込み顧客のコンバージョンのステージでは、デジタルマーケティングのあらゆるチャネルでウェブサイトを閲覧したことがある商品を表示し、コンバージョンを促進しました。

最後に、生涯価値の向上のステージでは、リテンション(既存顧客との関係維持)やリセール(再購入)などを目指すコンバージョン後のアクティビティによって、休眠顧客の掘り起こしにかかるコストを下げ、顧客の生涯価値(LTV)を高めました。

キャンペーンの全体的なROI(投資収益率)は400%近く上昇し、新規顧客率(ミス・セルフリッジのこれまでの顧客リストと照合した数字)は47%を達成しました。

多くのブランドでは、クリック数など広告パフォーマンスのKPIでメディアを評価しますが、これはマーケティングの実際のパフォーマンスを正しく反映したものとはいえません。適切な指標を用いて測定するライフサイクル・アプローチでは、出すべき成果を達成し、ROIを最大限に高めることができるのです。

2)適切なタイミング、適切な場所、適切なメッセージで顧客をター/ゲティングする

パンデミックによって、インターネットの普及と浸透は飛躍的に進みました。オンラインでの商品購入にそれほど熱心でなかった高齢者も、生きるために体得することを余儀なくされました。

COVID-19の第5波が襲来した香港で、消費財に対するeコマースのARPU(ユーザーあたりの平均年間収益)が最も高くなったのも当然のことでしょう。あらゆる小売業者がデジタルネイティブの関心を引こうと張り合う中、広告予算を最大限に活用するにはどうすればよいのでしょうか?

そこで注目されるのが、ダイナミック・クリエイティブ・オプティマイゼーション(DCO)です。数万種類に及ぶ広告のバリエーションから適切なメッセージをほんの数秒間で生成し、適切なタイミングで出し分けることができるのです。

在庫に変化が生じても、代わりに広告に表示する商品を選択するだけで対応できます。豪州の酒類販売チェーン「BWS」(エンデバーグループ傘下)による、DCOの活用例を見ていきましょう。

BWSの事業において、柱となっているのは「取扱商品の幅広さ」「利便性」「価値」です。そこで私たちが構築したのは、3つのフレームを備えたDCOテンプレートでした。

BWSは実際の在庫レベルや価格とDCOの広告をリアルタイムに接続する機能を活用し、ローカルのユーザーに向けて、すでに閲覧したことのある商品の現在価格と在庫レベル、オファー終了までの残り時間などを表示した広告を配信しました。この施策によって、重複を排除したROIは約300%上昇し、ROAS(広

告費用対効果)はたったの10日間でプラスになったのです。

多くの企業では今もなお、サイロ化されたメディアチャネルに基づいてメディアキャンペーンを管理しています。消費者のライフサイクルのそれぞれのタッチポイントでメッセージを配信して、カスタマージャーニーの次のステップへと進めることができていないのです。

(3)広告をボットではなく、人間に向けて確実に配信する

デジタル広告検証のグローバルリーダー企業であるインテグラル アド サイエンス(Integral Ad Science)が2021年10月に発表したレポートによると、ディスプレイ広告のアドフラウド率が最も高かったのはシンガポールで、ビューアビリティはすべてのプラットフォームにおいて低下傾向を示していました。一方で日本のアドフラウド率は、減少傾向にはあるものの世界で最も高い水準だったのです。小売業にとって、これはどのような意味を持つのでしょうか?

アドフラウドとは、実在する人間に対して適切なタイミングと場所で広告が配信されることを意図的に妨害し、インプレッションを発生させ、特定の取引における金銭的損失や機会損失を広告主やパブリッシャーにもたらす広告詐欺です。アドフラウドはボット、ピクセル・スタッフィング(肉眼では見えない極小サイズで広告枠やサイトを表示させること)、悪意あるアプリ、ドメイン偽装など、さまざまな形で表示されます。

対策を実施していないディスプレイ広告のアドフラウド率はグローバル平均で9.4%(2021年上半期)なので、1,000インプレッションのうち94インプレッションはターゲット・オーディエンスに配信されていないということになります。

また、ディスプレイ広告のビューアビリティ率は69.5%(グローバル平均、2021年上半期)でした。つまり、実在する人間に配信された906インプレッションのうち、ビューアブル(広告面積の50%以上が画面に1秒以上表示されて閲覧できる状態)な広告はわずか629インプレッションで、残りの371インプレッションは無駄になったということなのです。
マーケティング・キャンペーンがアドフラウドに遭う可能性を低くするには、どうすればよいのでしょうか? まず、IAB UK(英国インタラクティブ広告協議会)のゴールドスタンダードを取得したエージェンシーを探しましょう。このスタンダードは、デジタル広告体験の向上や、GDPR(一般データ保護規則)やeプライバシー規則の準拠、アドフラウドへの対処、そしてブランドセーフティの確保に役立つものです。

次に、エージェンシーと協業する際には、高いビューアビリティを確保するためにどのような役割を果たしてくれるのか、エージェンシーに尋ねてみましょう。将来を見据えるエージェンシーは、すべてのインプレッションがあらゆる企業に安全な環境で的確なターゲットに届くよう、インテグラル アド サイエンスやグレープショット(Grapeshot)など市場をリードするベリフィケーションツールとDSPを提携しているはずです。

広告予算を最大限に活用するために

広告予算を最大限に活用するために、とり得る手段はいくつもあります。顧客のライフサイクルはどのようなものなのか、そして御社ならではのフックとなる理想的なメッセージは何なのかを、掘り下げることに時間をかけてください。また、広告が適切な人に向けて、適切なメッセージが適切なタイミングに確実に届くようにするため、DCOを使い始めましょう。

そしてIAB UKのゴールドスタンダードの認証を取得した、市場をリードするベリフィケーションツールを積極的に導入するエージェンシーと協業して、広告予算が効率的に使われるよう、今すぐ行動に移すことが何よりも重要です。

広告予算を最大限に活用するお手伝いをどのようにできるか、詳しくご説明させていただきます。ぜひお気軽にお問い合わせください。

筆者について

ジョシュア・ウィルソンのデジタルマーケティングのキャリアは、2013年にソーシャルネットワークとモバイルDSPでブランドのプロモーションを行うアフィリエイトマーケティングビジネスを開始したことから始まりました。その後、コンテンツの分野に進み、ブランドと協業してオンラインプレゼンスの確立とコミュニティの形成を支援しました。

2015年、クライアントサービスマネージャーとしてクリムタンに入社し、APACビジネスの知識を活かして従事。2018年、東京に移り、Crimtan日本オフィスを開設しました。現在はJAPACのコマーシャルディレクターとして、Crimtanのローカルおよびインターナショナルで能力を促進する地域のオペレーションを統括しています。